お気に入りの散歩。

　カレンダーによると、もう秋になっているはずなのに。なかなか涼しくならないでいた。もちろん、夏だって好きなんだけれど、早くほんとの秋になって欲しかった。なぜならば！　涼しくなったら羽織りたいと思っている、デニムのジャケットがあるんだよ。

　お気に入りのジャケットがない人は、「寒くなったら、いつでも着ればいいじゃない」なんて言うけれど、お気に入りのジャケットを羽織れる期間っていうのは、結構短いもんなんだ。あと、それから。着るじゃなくって、羽織るって言ってほしい。だって、やっと秋なんだから。

　まあ、ともかく。今日はやっと涼しくて、ついに秋になったから。待ちに待ったこのデニムのジャケットを羽織って、とても気分よく散歩に出た。せっかく待ちに待ったのだから、お気に入りの湖を、ぐるっと軽快に歩いてみた。

　湖岸にでしゃばる黄金色のネコジャラシとか、ゆらゆらしてるススキとか。きのうもきっと、そこにいたんだろうけど。ボクはぜんぜん気づいてなかった。お気に入りのジャケットで散歩をするまでは、きっとボクの中では、まだまだ秋じゃなかったんだ。だったらそこにいたって、ボクの知ったことじゃない。

　気分よく散歩を終えたら。ボクはとっても気分がよい。

　ほんとは、ついさっきまで、とっても落ち込んでいたんだよ。はははっ。

　落ち込んだときに必要なのは、お気に入りのジャケットと楽しい散歩だってことを、なんだか久しぶりに思い出した。

　今日がとっても、有意義な日になった。