「ごめんなさい」って言わない。

「ごめんなさい」は、誰のために言うんだろうね。それは、きっと、自分のために言うんだと思う。僕はもう、ちゃんと謝ったでしょ。謝罪しました。お詫び申し上げました。

「だから、謝ってるじゃないか！」なんて悪態は、どうして出てきちゃうんだろう。本当に謝りたかった。悪いと思った。反省した。そんな気持ちを伝えたかった。だけど、うまく伝わらない。

　あなたを傷つけてしまったこと、悲しませてしまったこと、怒らせてしまったこと。それらを僕は、本当に後悔していて。だから、どうしても伝えたい。

　許して欲しいからじゃないんだ。僕のせいで乱れたあなたの心を、なんとかいつもの、平穏な心に戻したいだけ。だけれど、いつもは優しいあなたの心に、僕の陳腐な言葉は届かない。

　泣きたい気持ちにもなるけれど、聞いて欲しいなんてお願いはできない。だってそれじゃあ、本当に自分のための謝罪になっちゃう。

「言葉で伝わらなければ、態度で示せばいい」って、誰もが簡単にそう言うよ。確かに僕もそう思う。でもね、態度で示すって言うのは、簡単そうではあるけれど。なぜだか、なかなか難しい。

　だったら、どうだろう。あなたの心の平穏だとか、誰のための謝罪だとか、態度で示せば伝わるだとか。そんなの一旦おいといて。素直に甘えてみようかな。

「ねえ、まだ怒ってますか？？」

　あまりの僕の不合理さに、もしも「くす」っと笑ってくれたら、一歩前進できそうだ。

　だってね。
　いろいろ理屈をこねたって、僕はあなたと仲直りがしたいだけなんだ。

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