お仕事をしていると。とってもやってっれない気分になることがある。
なんで、自分だけ。どうして、こんなことやらされるの? あっちの方が楽そうだ。これじゃ、まったく不公平だ。
嫌になっちゃうよ。本当に。
でも、そんな気持ちでお仕事するのも、なんだか癪だ。
だって、ただでさえ自分は、大変な思いで仕事をしている。他の誰よりも。なのに、その上、嫌な気分にさせられるなんて。そんなの、ガマンならない。
それならば。せめてもの抵抗だ。
勝手にいい気分になってやる。
よし、少し手を抜いてやろうかな。困れば、みんなも気づくだろう。
ほら。よく言うじゃない。どんなことだって、いつかはきっと、役に立つ。嫌な仕事でもがんばれば、きっといつかは、自分のためになる。誰かがきっと、見ていてくれて、いつかは誰かが認めてくれる。
はっきり言ってさ。そんなのどうでいいことで。いつかいつかって、それはいつ?
くるかこないかわからないイツカよりも、イマいい気分になりたいの。
ふふふ。なるほど。かわいそうに。
ボクはキミと違ってさ。つまんない仕事はしていても、ボクだけにしかない特権がある。
確かに、見張りは大変で、気を抜くことは一切できない。
敵なんて、いつくるんだか分からない。だから、ずっと見てなきゃならない。
なんにもなければ、それが普通。発見できても、それが普通。失敗した時だけ、怒られる。まったく、なんて不公平。
それに比べてあいつらは。敵がこなければ遊んでるだけ。たまには食料を取りに行っても、それが終われば、水遊び。
そうそう。なんて不公平。こんなつまらない仕事でも。いやいや、本当は、この仕事だから。ほら見てよ。すっごいキレイな景色でしょ。ずっと遠くまで見渡せて、時間と一緒に変化して、季節が変わるのだってよくわかる。
あ、いつものおじさんだ。「こんにちは!」
ボクばっかりに押し付けられて、まったくやってられないよ。
それならば。せめてもの抵抗だ。
勝手にいい気分になってやる!
そう思った時に、気づいた特権。
こんな不公平、確かに他には存在しない。みんなはせっせと仕事をしても、ここよりラクかもしれないけど。でも、ほら。こんな景色は見られない。
ボクの仕事はけっこう大変だけど。
けっこう大きな特権がある。
これがボクの、せめてもの抵抗だ。
勝手にいい気分になっている。
それに、ほんとは知ってるでしょ。
少し手を抜いてみたって、気分はぜんぜんよくならない。
むしろ、ますます悪くなる。
だったらいっそ、ひらきなおって。自分の特権に早く気づいて。そしたらそれを、存分に味わうのがいい。
勝手にいい気分になってやろう!
Photograph & Story :
僕達には冒険が必要で、
僕達には想い込みが必要で、
僕達にはストーリが必要だ。
-- 加賀美 ケント
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