ボクらの特権。

2021/04/25

ストーリー


 お仕事をしていると。とってもやってっれない気分になることがある。
 なんで、自分だけ。どうして、こんなことやらされるの? あっちの方が楽そうだ。これじゃ、まったく不公平だ。

 嫌になっちゃうよ。本当に。

 でも、そんな気持ちでお仕事するのも、なんだか癪だ。
 だって、ただでさえ自分は、大変な思いで仕事をしている。他の誰よりも。なのに、その上、嫌な気分にさせられるなんて。そんなの、ガマンならない。

 それならば。せめてもの抵抗だ。
 勝手にいい気分になってやる。
 よし、少し手を抜いてやろうかな。困れば、みんなも気づくだろう。

 ほら。よく言うじゃない。どんなことだって、いつかはきっと、役に立つ。嫌な仕事でもがんばれば、きっといつかは、自分のためになる。誰かがきっと、見ていてくれて、いつかは誰かが認めてくれる。

 はっきり言ってさ。そんなのどうでいいことで。いつかいつかって、それはいつ?
 くるかこないかわからないイツカよりも、イマいい気分になりたいの。




 ふふふ。なるほど。かわいそうに。
 ボクはキミと違ってさ。つまんない仕事はしていても、ボクだけにしかない特権がある。

 確かに、見張りは大変で、気を抜くことは一切できない。
 敵なんて、いつくるんだか分からない。だから、ずっと見てなきゃならない。

 なんにもなければ、それが普通。発見できても、それが普通。失敗した時だけ、怒られる。まったく、なんて不公平。

 それに比べてあいつらは。敵がこなければ遊んでるだけ。たまには食料を取りに行っても、それが終われば、水遊び。

 そうそう。なんて不公平。こんなつまらない仕事でも。いやいや、本当は、この仕事だから。ほら見てよ。すっごいキレイな景色でしょ。ずっと遠くまで見渡せて、時間と一緒に変化して、季節が変わるのだってよくわかる。

 あ、いつものおじさんだ。「こんにちは!」

 ボクばっかりに押し付けられて、まったくやってられないよ。
 それならば。せめてもの抵抗だ。
 勝手にいい気分になってやる!

 そう思った時に、気づいた特権。

 こんな不公平、確かに他には存在しない。みんなはせっせと仕事をしても、ここよりラクかもしれないけど。でも、ほら。こんな景色は見られない。

 ボクの仕事はけっこう大変だけど。
 けっこう大きな特権がある。

 これがボクの、せめてもの抵抗だ。
 勝手にいい気分になっている。

 それに、ほんとは知ってるでしょ。
 少し手を抜いてみたって、気分はぜんぜんよくならない。
 むしろ、ますます悪くなる。

 だったらいっそ、ひらきなおって。自分の特権に早く気づいて。そしたらそれを、存分に味わうのがいい。

 勝手にいい気分になってやろう!



Photograph & Story : 

 僕達には冒険が必要で、

 僕達には想い込みが必要で、

 僕達にはストーリが必要だ。

-- 加賀美 ケント



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